よまいごと

 

 正直に言ってしまうと、その飲み会が始まってからもうずっと、海藤は彼ばかりを見ていた。
 だって無理もない。普段行事を好まない彼が、いくらゼミ活動の一環とはいえ飲み会に来るなんて、意識せずにはいられなかった。
 といっても彼はアルコールには興味が無いようだった。自分から注文するのはデザート類ばかりで、たまに勧められて甘い酒を飲んでいた。
  ――そう、それほどまでに事細かく見ていたのだ。上の空だったといっても過言ではない。 話しかけてくる女の子に相槌を打ちながらも、海藤は一心に彼――斉木楠雄の姿を盗み見ていた。
 自分の好意が、純粋な友情から突出していることに気付いたのは随分と前だ。それこそ彼と出会い、暫く経った高校生の頃の話だ。
 それでもだからどうすることもなく、海藤はその思いを内に秘めたまま彼の傍にいた。口にした時に失うものの大きさを考えれば、それほど理解出来ない行動でもない。
 やがて無事高校を卒業し、進路も母親が切望していた大学に合格することが出来た。どうにもならない思いと別れに踏ん切りをつけかけた時、同じ大学に斉木も通うことになったと聞いて、喜びよりも先に呆然としたのをよく覚えている。 それでもまた隣を歩けるのは純粋に嬉しかっ
た。大学自体は隣町の為
 海藤は家を出なかったが、斉木は入学と共に一人暮らしを始めていた。
 新しい環境に加えて、慣れない家事をするのはさぞ大変だろうと思っていたが、自分のペースで生活出来る快適さの方が勝ったらしい。何度か様子を気遣ったものの、斉木はどことなく満足気だった。
 それから一年近く経ち、大学生活にも慣れてきた頃、新しく始まったゼミの顔合わせの意味も込めて、学部全体で大きな親睦会が開かれることになった。
 海藤はその知らせを最初のゼミで聞き、真っ先に斉木のことを考えた。サークル活動もせず、その手の強引な勧誘行事も一切意に介していなかった。今回も恐らく気乗りしないと首を振り、我関せずといった風に足早に帰ってしまうのだろう。そう思っていた矢先だった。
「海藤くんグラス空いてるね。何がいい?」
「え、ああ――何、でも」
「そう? じゃあ適当に頼んできてあげる」
 隣にいた女の子にグラスを取られ、海藤は咄嗟に頷いた。店員を捕まえにいく彼女の背を見送って、凝りもせずにまた斉木の姿を伺う。 隅の方で目立たないように座っている彼に、誰かが話しかけている。よく見るとそれは海藤が所属するゼミの先輩だった。上級生もゼミにいさえすれば参加可能だった為、この場にはちらほらと暇な先輩方が見受けられた。 男は二言三言話しかけた後、乾杯の際ウーロン茶を開けてから空だった斉木のグラスに、瓶ビールを注いだ。
 斉木はその様をじっと眺めている。 そして男は軽く自分のグラスを掲げた。付き合え、という無言の圧に斉木の表情は変わらない。海藤は居た堪れない思いでそれを見ていた。
 何といっても相手は年上であるし、斉木の直接的な先輩ではないにしろ、この場に置いてはそう細かいことも言っていられない。注がれたのだから飲む、そうするしかないのだが、斉木はまんじりとも動く気配が無い。 海藤は思わず腰を浮かせた。もしかすると斉木はビールを一滴も飲めないのかもしれない。
 それで戸惑っているのかも。
 いずれにせよ助け船を出さねばと立ち上がりかけた時、膝に置かれたままだった斉木の腕がグラスを掴んだ。
 あ、と口にしてしまいそうになってやっとのことで押し留める。斉木は手にしたグラスに口を付けると、中の泡立つビールを一気に飲み干したのだ。
 本当に何の躊躇いも無く呷るその姿に先輩と二人ぽかんと見つめる。
 綺麗に空いたグラスを静かに置き、斉木は何事も無かったように食べかけのアイスクリームに手を伸ばした。 先輩も暫し呆気にとられていたが、やがて楽しそうにげらげらと笑いだした。そして斉木のグラスを再度引き寄せると、今度は泡がこぼれそうになるぐらいにまでたっぷりと注ぐ。それから自分のグラスを飲み干し、手酌をした。
「お待たせ、海藤くん――どうしたの?」
 グラスを片手に戻ってきた彼女に慌てて首を振り、海藤は自分の分を受け取った。なみなみと注がれたビールを前に、アイスクリームを食べている斉木を眺めつつ、受け取った酒を少し含む。 強い匂いと苦みが舌を刺激して、顔が火照る。種類は分からないが、それなりにアルコールが強いらしい。海藤自身成人してまだ日は浅く、酒を飲んだことが多くある訳ではない。
 まだ慣れていないという点を考慮しても、それほど自分が強い方ではないだろうと予想してもいた。
 それでも、とその強い酒を飲む。もし斉木が口に出来ないのなら、あの場に割り込んで代わりに飲むつもりだった。自然に、それこそ殆ど無意識に、そうしたいと思っていた。自分でも笑ってしまう程、ぶれることのない感情だった。
「海藤くんって、結構お酒強かったりする?」
 興味津々といった風に問いかけられ、海藤は言葉を濁す。手にしたグラスに口をつけたまま斉木を見ると、丁度溢れんばかりのビールに手を伸ばすところだった。
 可能性はゼロじゃない。飲めないのに無理をして、付き合っている可能性は、まだ。そう思いながら海藤は、冷たく喉を焼くアルコールを流し込んだ。
 一時間ほど経ち、気付けば周りは皆程良く出来上がりつつあった。海藤も内側からかっかと燃える熱を感じて、大 きく息を吐いていた。
 飲み干したグラスを置いて、海藤はぐるりと辺りを見回した。いると思っていた場所に斉木がおらず、少し焦っていた。顔色一つ変えずに淡々とアルコールを消化していく斉木に、僅かに残っていた懸念が消えて安堵し、視線を外しがちだったのだ。
 やがて海藤は玄関近くの椅子に座っている斉木を見つけた。傍らには斉木にビールを注いでいた先輩がおり、気遣うように顔を覗き込んでいる。
 さっと熱が引くのを感じた。迷わず席を立ち、二人に近付く。先に気付いたのは先輩だった。
「ん? お前うちのゼミの――」
「海藤です。あの、斉木は」
「ああ、こいつか。ちょっと調子に乗らせ過ぎたかな」
 ばつの悪そうに頭を掻く先輩を横目に、海藤は俯いている斉木を恐る恐る伺った。表情に変化は見られないし、顔色もそれほど紅潮してはいない。
 けれど身体はだらりと投げ出すように弛緩していて、普段の姿からすればかなり異質だった。
「斉木?」
 海藤が呼ぶと、斉木は伏せていた瞳を海藤に向けた。眼鏡の奥で少しだけ、揺らいでいるようにも見えたそれに、驚く程心が掻き乱される。
「なあお前、悪いけどこいつ送って行ってくれないか。流石にこれじゃ一人で帰す訳にもなあ」
「えっ? いやあの、構いませんけど……」
「そうか、悪いな。教授には俺から伝えとくから、よろしくな」
 先輩はそういうと、教授がいる辺りの席へ歩いて行ってしまった。見回すとあちこちで酔いが回ったものを介抱する姿がある。
 雑然としたこの中で抜け出ても、恐らく誰にも見咎められないだろう。海藤は面倒な絡まれ方をする前にと、再び斉木を伺う。
「立てるか、斉木。帰ろうぜ」
 斉木は小さく頷くと、思ったよりあっさりと椅子から立ち上がった。そのまま脇目も振らず滑るように扉へ向かっていく。
 慌ててその背中を追いかけた所で、海藤くん、と後ろから呼び止められた。
「もう帰っちゃうの?」
 ずっと近くにいた女の子が心底残念そうに言う。
 海藤は心苦しく思いながらも、一人先に出て行ってしまった斉木のことが気がかりでそれどころではなかった。
「ごめん、また授業で」
 それだけ言って、彼女に背を向けた。足早に斉木を追いかけながら、海藤は少しだけ熱が残った頭でぼんやりと思う。
 ああ結局自分はまだ、好意的な女の子よりも、彼のことを選んでしまうのだ。燻った感情をまた自覚してしまって、それを振り切るように足を早めた。

 すぐそこにいた斉木の隣に並んで歩く。学校から程近い店を選んだ為、斉木の借りている部屋にも徒歩で帰れる距離らしかった。
 そう、一人暮らしをしていることは知っていたが、海藤は斉木の家に行ったことが無かった。気にならないと言えば当然嘘になる、未だ内に蟠る思いがある以上、そう易々と深入りは出来なかった。
 だから海藤は黙々と歩き続ける斉木を心配しながらも、少しだけ浮足立つ気持ちを覚えてい
た。もちろんそんなあからさまな、口に出すことも憚られるような不純がある訳ではない。ただやはり、高揚してしまう のは避けられなかった。
 やがて小さめの建物の前にさしかかり、斉木が立ち止まった。海藤も合わせてそこで止まり、何となくその建物を見上げる。
 恐らく目的の住まいはここなのだろう。
 そう思って斉木を見ると、黙ったまま首を振られて戸惑う。 ここまででいい、ということだろうか。普通に考えればそうだ。そもそも相手は一人の成人男性であって、何ならここまでしっかりと自立して歩いてきたぐらいなのだから、これ以上の付き添いなど必要ないだろう。
 海藤はぐっと拳を握り込んだ。それでも、それでも最後まで付き合いたいと思った。特別な意味だけではなく、単純に一人の好意を持った人間として心配していた。
 階段や段差で躓くかもしれない、そんな風に未練たらしく思いながら、斉木を見つめる。
 その内斉木がふっと息を吐いた。そして海藤に背を向けると、エントランスに入っていく。海藤はそれを見送りかけるが、振り返った斉木の視線に思わず駆け寄る。
 近付いた斉木は、もう一度深く嘆息した。その諦めのような姿に少しだけ心が痛むが、黙ったまま階段を上り始めた。
 上った廊下の奥、突き当りの部屋の前で斉木は足を止める。建物の印象と反して大きめの扉を海藤はしげしげと見つめた。
 すると斉木が徐に手を伸ばし、部屋の呼び鈴を押した。海藤は思わずぎょっとする。部屋の主がここにいるのだから、中は無人の筈だ。そう、無人の――
「はいはーい、今出まーす」
 扉の向こうから微かに聞こえた声に、身体が硬直する。最初に思ったのは 両親、次は親しい友人、そしてその次が――恋人だった。
 海藤は思わぬ緊張を味わいながら、近付いてくる気配に身構えた。
「遅かったっスね斉木さん――あれ?」
 バタバタと飛び出してきたのは、挙げたどれにも属しそうにない人間だった。
 特徴的な話し方と身なりは高校の頃から変わらない。寺の息子で、幽霊が見える。そんな自己紹介と共に転校してきた以前の同級生、鳥束零太がそこにはいた。
「えっと――」
 言葉を失った海藤を見て、同じく戸惑ったように鳥束も口ごもる。
 ただ一人斉木だけが普段と変わらない様子で、少しだけ眠そうに目を細めているばかりだっ
た。
 鳥束、確かにこの男は海藤と斉木の同級生だったものの、クラスは異なっていた。海藤自身とはある部活動での関わりが主な関係だったが、斉木とは少し距離が近いような気はしていた。 ただ特別親しい友人か、と問われると疑問が残る。傍目の印象だが、どことなく互いに一定の距離を取り合っているようにも見えていたからだ。
 早い話が、斉木の部屋で彼が不在の間、一人で留まっているような関係性には見えなかった。
 尤もそれは海藤の一意見に過ぎない。高校卒業後にまで会っているのだから、それなりの関係なのかもしれない。海藤が葛藤しながらもそう一人納得させていると、鳥束が朗らかに笑った。
「久しぶりっスね、もしかして送ってくれたんスか?」
「あ、ああ……まあな」
 咄嗟に頷いたものの、海藤は鳥束の些細な言葉尻が気になっていた。
 送ってくれた 、言われた言葉を反芻する。 仮に留守番を兼ねて帰りを待っていた友人だとしても、送ってくれたなんて言い方をするだろうか。友人というなら海藤だって同じ立ち位置の筈
だ。
 何故鳥束一人が内側――斉木の内側から、言葉を発しているように聞こえるのだろう。
「珍しいっスね斉木さん、よっぽど回っちゃったんだなあ」
 そう言うと鳥束は、だらりと垂れ下がっていた斉木の腕を掴んだ。そのまま抑えていた扉の中へ引っ張り、意図的かどうか判断がつかない程、自然な動作で彼の姿を隠す。
「じゃあ、ありがとうございました」
 爽やかな笑みに、海藤はその意味を量りかねる。いや、求められていることは見当づいてい
た。だからその意図通り踵を返しかけたものの、その行動の根源についてどうしても問いかけずにはいられなかった。
「お前は――帰らないのか」
 海藤の問いに、鳥束は一瞬目を見開いた。そして困ったように眉を下げ、頭を掻いて言う。
「もう帰ってるんスよ」
 じゃあ、と告げられ扉が閉まる。海藤はその場に立ち尽くしたまま、また鳥束の言葉を思い返す。 ルームシェア、ふと浮かんだ単語を呟いてみる。ピンとくる内容はそれしかないが、わだかまる違和感は拭えない。 だけど、だから、何だというのだろう。
 海藤は小さく息を吐いた。酔いなんてとうにどこかへ消えていた。残るのは軋むような頭痛
と、腹の底をじわじわと冷やす物騒な感情だ。 ゆっくりと部屋から離れながら、海藤は考える。例えばもし時間が巻き戻せたとしたら、自分とあの男の立場がまるごと変わっているのだろう
か。もし変わったとしたら、何が。
 そこまで考えたところで、不毛な思考を咎めるようにこめかみが鈍く痛んだ。

 遠のいていく足音を聞いて、鳥束は玄関に立ったままの背中に向かって声をかけた。
「本当、珍しいっスね。どうしたんスか?」
 斉木は黙ったまま振り返った。気だるげに身体を持て余していたが、その瞳はしっかりと鳥束を見据えている。鳥束は扉の鍵をかけると、もう一度その手を取って部屋の中へ足を踏み入れ
た。
「一人で抜けてこないのも珍しいし、素直に飲んでるのも珍しい」
 テーブルの前に座る斉木を見下ろしながら、鳥束は手慣れた動作でコーヒーを淹れていた。その口調はどこか状況を楽しんでいるようにも聞こえる。
 斉木の表情は変わらない。熱いコーヒーをその目の前に置いて、鳥束は何とはなしに呟いてみる。
「送ってもらうとか、珍しい所の話じゃないっスよね」
 褐色の水面を見つめていた視線が、すっと鳥束を捉える。その鋭い目つきに少しだけたじろぐが、もちろんそんなことはおくびにも出さない。
 どういう意味だ、そう問いかけてくる瞳に、鳥束は微笑み返した。
「別に、何でも? 何か深い意味があるのかなーって。――まあ、俺には分かんないんスけど」
 鳥束も目の前に腰掛け、淹れたばかりのコーヒーを含む。鳥束が言わんとしていることはもちろん伝わっているし、その勘繰りは恐らく事実だ。
 そしてその決定的な根拠を斉木は知っているが、それを鳥束に教えることはない。他人の心情を必要以上に口外するなど気の進むことではないし、鳥束だってそうまでして聞きたい訳では無かった。
 ただ少しだけ、揚げ足を取りたかっただけに過ぎない。
「飯は食ったんスよね。あ、あれありました? コーヒーゼリ―」
 鳥束はのんびりと話しかけながら、冷蔵庫を開けて中のゼリーを取り出す。些細な杞憂や悋気など持つだけ無意味だ、そんなことを思いながら薄いフィルムを剥ぐ。
 通常ならきっと、わざわざチャイムなど鳴らさずに、鍵を開けていた。その気配で鳥束がやってきても、意思を伝えてその場に留まらせればいいだけの話だ。
 それをしなかったのだから、今日の斉木には明確な意図がある。それこそ、そう易々と口に出来ない意図が。
 椅子に腰かけ、丁寧に蓋まで開けて、鳥束は斉木にゼリーとスプーンを差し出した。斉木はじっとそれを見つめて受け取る。そのまま食べるのかと思いきや、突然その場に立ち上がった。そして座ったままの鳥束の前に近付くと、驚くほど自然に、足の上に乗りかかってきた。 鳥束は少しだけ驚きながらも、暫し上にある顔を見つめる。
 もちろん普段と何も変わらない。吐く息からは酒の匂いがしているが、そんなことは些細な違いに過ぎない。彼に多少のアルコールなど何の変化ももたらさない筈だ。
 木製の椅子が鈍く軋む。鳥束はいつも通りの澄ました顔に手を伸ばし、声を潜めて聞いた。
「酔ってる?」
 視線が宙を彷徨い、やがて斉木は頷く。そして手にしたままだったゼリーとスプーンを、憮然とした様子で突き返してきた。鳥束はそれにだらしなく笑って、受け取ったゼリーにスプーンを差し、すくい上げる。
「斉木さん、酔ってるんスもんね。仕方ないっスよね」
 そう言って、スプーンに乗せた柔らかいそれを口元へと運ぶ。控えめに頷いた斉木の唇がゼリーに触れ、飲み込まれていく。鳥束は込み上げる笑いを抑えきれずに肩を震わせながら、身体をゆらゆらと揺りかごのように動かした。まるで子供をあやす素振りに斉木が眉を顰める。それでも差し出されるスプーンには素直に口を開けてきて、鳥束は至極楽し気に笑いをこぼす。 カップのゼリーが全て無くなった所で、鳥束は斉木に口付けた。残りがあと少しになった所から仕掛けようと考えていたのだから、避けられないのはつまり、そういうことだ。
 何度か触れるだけのそれを繰り返して、指で唇に触れる。噛み付かれるか、などと考えていた本当に歯を立てられて、くすぐったさと込み上げる劣情に息が乱れる。
「足、痺れてきたっス」
 囁いた言葉は、合図だ。空のカップとスプーンを取り上げると、それらを流し台に置き、斉木は歩き出してしまった。恐らく布団に行くのだろうが、その前に服を着替えなければならないし、歯だって磨かなければならない。酔っぱらいにその全ての行動を一人でさせるには、流石に不安が残る。
 鳥束も苦笑して立ち上がり、歩いていく背中を追いかける。もちろん彼は酔ってなどいない
し、例え前後不覚になる程酔ったとしても、他人に手をかけさせることは無い。
 だが、そんな互いに分かり切っている事実なんて今は要らないのだ。どっちにしろ熱に浮かれていることには変わりない。
 それにきっと、飲んで帰ってきた当人が、こうなることを一番望んでいるのだから。
「さーいきさん、歯磨きましょうよー」
 それから服を着替えて、洗い物をして。風呂の湯を張り忘れていたけれど、とりあえずシャワーを浴びてから入れればいい。
 溜まる頃にはきっとのんびりと、二度目に入りたくなっているだろうから。