鳥束×窪谷須×斉木 R-18「TRY」 本文サンプル

 

【あらすじ】
ようやく引っ掛けた女の子にしてやられた鳥束。
「窪谷須亜蓮を連れてきたらみんなで――」といういかがわしい誘いに乗るべく、窪谷須と仲良くなってどうにかしようとするが――?
※斉木受のギャグ本 冒頭程度のモブ描写・捏造・下ネタ等有り。

◇同日発行されます斉木楠雄受けアンソロジー「Ψ愛-saiai-」に海藤×斉木で参加させていただきました。


 そりゃあまあオレだって純愛志向が無い訳じゃない。 甘酸っぱい青春の一幕、そんな光景を夢見ない訳じゃないのだ、断じて。
 それでもやっぱり頭にある欲望が現れてしまって、どうしてもプラトニックに上手く進められない。だからオレは考えた。
 最初から趣味の合いそうな頭の、いや尻の、いやいやフットワークの軽そうな女の子とお近づきになろう。
 そうすればお互い至極円滑にセックス、もとい身体的接触が可能になり、晴れてオレの愛も報われるというものだ。
 そう、だからそれを実行しようとした。
 なるべくなら厄介ごとは避けたい。生徒の自主性を重んじるような学校、早い話が校則の緩そうな学校にあたりをつけて、その制服を着る女の子に声をかける。 いつも通り無下にされるかと思いきや、ゲームセンターや比較的賑やかなアーケードで明るく話しかけると、意外なことに乗ってくれる女の子が結構いた。オレは持てる知識を尽くして女の子に話しかけ続けた。
 時にはお茶の後残った伝票を鮮やかな手練れで押し付けられ、またある時にはデートと言う名の荷物持ちに駆り出されながらも懸命に距離を詰めていった。
 そしてついに、ついぞ今日、茶髪をふわりと流しいやらしく胸元を開けたまさにゆるそうな女の子と二人きり、夜の密室へと洒落込むこととなったのだ。
 思えばこの時、カラオケでもオレの部屋でもないことに疑問を抱くべきだったのだが、最早フルスロットルにエンジンのかかった下半身に歯止めは効かなかった。
 意気揚々と向かった指定された場所は、とあるマンションの一室。嫌な気配がいよいよはっきりと漂い始める。何故なら彼女の自宅は一軒家だったのだ。
 表札の掛かった家へ送り届けた過去からも断言できる曲げようのない事実だ。しかし重ねて言うがオレの興奮は既に振り切れていた。

 午後八時、とっぷりと暮れた宵闇の中、辿り着いたエントランスで部屋番号を呼び出し、エレベータへ乗り込む。
 一人暮らし向けらしいその建物は清潔で、週末の夜であるにもかかわらず静かだった。おそらく住人は羽振りの良い学生か社会人が多いのだろう。
 六階まで上がって目的の部屋に向かい、チャイムを鳴らす。人気のない廊下でオレの微妙に弾んだ呼気だけが間延びしていた。
 すぐさま鍵が開く音がして、オレは掌の汗を尻で拭い、恐る恐るその扉を押し開けた。 扉の向こうにはよくある1Kマンションの間取りが広がっている――のだろうが、部屋の中は薄暗く何も見えてこなかった。とりあえず玄関に足を踏み入れ、後ろ手にノブを掴んだまま闇の中で目を凝らす。
 すると廊下の奥からくすくす、くすくすと鈴の転がるような女の笑い声が聞こえてきて、鼓動がどきりと跳ね上がった。
 もちろん恐怖ではない。この場合心霊現象を思って怯えるパターンもあるだろうが、それはオレには通用しない。
 いつでも彼らの姿が見えているオレにとっては日常。それに生身の人間との違いもすぐに分かる。オレが反応したのは、その声が一人のものではないことだ。
 彼女とは二人きりの約束をしている。まさか彼女がそれを反故にした? いやでももしかするとアンタだけ一人でずるーい、あたしもいきたい! なんて経緯で、この向こうにはめくるめく世界が待っているのかも……? そこまで考えたところでオレの杞憂は吹っ飛び、止まっていた足は進みだした。
 靴を脱ぎ、フローリングをペタペタと足音を立てながら歩く。はっきりしない視界の手助けにと壁に手を添わせて進んでいると、途中で何もない空間に触れて空を掻く。
 浴室らしい扉の真向かいにあるそれは、小さなキッチンのようだった。ステンレスのシンクに手が触れ、その冷たさに何もかも現実であると改めて思い知らされて喉が鳴る。
 次第に暗闇に慣れ始めた目が、廊下の突き当たりをとらえる。 立ちはだかるもう一枚の扉に向かって、オレは手を伸ばした。ぐっと力を入れて押し開き、中へと足を踏み入れる。
 思いの外広い部屋だった。やはり電気はついていないが、奥にあるバルコニーへ続く窓のカーテンが開かれ、月明かりがうすぼんやりと指し込んでいる。
 オレはその光につられるように部屋の中心部へ歩み寄った。すぐさま視界の端に人の気配を感じて、右方向へ身体を向ける。
 暗い視界で、白く際立って輪郭を浮かび上がらせているのは――足だ。生足、太股、そして
腕!
 衣服で包まれていない素肌が闇の中で艶めかしく輝いている。オレは思わずその場に跪き、その白さ眩さに祈りと感謝を捧げそうになった。
 しかしそうしなかったのは、カチリと音を立てて灯ったライターの火に気を取られたからだ。 小さな火の上に浮かぶ顔。それはまさしくオレと約束を交わした彼女だった。
 彼女は恭しく唇に挟んだ細いタバコに火をつけて、煙と共に小さく笑いを吐き出した。
 それを合図に、部屋の電気が一斉に点く。 いきなり明るくなった視界に何度か目を瞬いて、ようやくオレは状況を理解した。
 ものの少ないシックなコーディネイトの部屋だ。オレのすぐ横には黒いガラス製のローテーブルがあり、簡素な銀の灰皿が置かれている。
 フローリングの上には毛足の長いダークブラウンのラグマット。モノトーン調で抑えられた内装は、オレが目指すモテ部屋に程近い空気を醸し出していた。
 そして目の前の壁に沿って設えられたパイプベッドの上には、オレと約束した彼女を含めて三人、女の子が腰かけていた。
 一人は茶色いセミロングの髪を耳にかけ、しなやかな足を組んでいる。もう一人は背中の中心ほどまである黒髪を垂らし、姿勢よく膝頭を合わせて座っていた。
 顔はいずれも薄く化粧を施していて、なかなか可愛い。 件の彼女はその中心にゆったりと寛
ぎ、手慣れた様子で煙をくゆらせていた。三者三様、魅力的な女の子が揃っているが、皆同じ制服であることと、唇の端に隠し切れない好奇が漂っていることは共通していた。
 きりりと吊り上ったキツそうな瞳の奥に、妖しい色を揺蕩わせて、彼女はゆるりとオレに笑いかけてきた。
「友達も呼んじゃった。ダメ?」
 そんなことないよ大歓迎。流れるように口をついて出たオレの返答は飢餓感にかさついてい
た。今すぐそのみずみずしい肌にしゃぶりついて潤わせたい。
 そんな思いで生唾を飲み込むオレを、三人の瞳がきらりと光って取り囲む。
「じゃあ早速だけど……脱いでくれる?」
 タバコを指で挟んだ彼女は、手元のそれに似つかわしくないほど柔らかい、少女のような笑みで小首を傾げた。オレはその過程や建前をぶっ飛ばした斜め上の始まりに内心恐れをなしていたが、それ以上の魅力を秘めた誘惑に圧倒されていた。気付けばオレの指はそろそろと胸元のボタンに伸びていたのだ。
 制服のシャツを脱ぎ置き、ベルトに手をかけて留まる。オレが視線を向けても、三人の女の子は一度も目を逸らすことなく行く末を見守っていた。
 カーテンを開け放った明るい部屋、高層階でそうやすやすと人の目は届かないとはいえ、外から丸見えの状況かつ、ここがどういう場所かも未だ分かっていない。
 それなのに脱ぐのか? 脱いでしまうのか? 倒錯的な状況とまだ見ぬ期待に頭がはちきれそうだった。
 オレは震えそうになる指でベルトを抜き去り、ズボンを少しだけ引き下ろした。
 気合を入れて選んだ洒落た下着のゴムが僅かに覗く。初めて女の子にさらすトランクスがまさか三人同時にだなんて。なかなか人に言えたものじゃないと改めて思う。
 前を寛げた半端な状態になったオレを見て、彼女は黙って立ち上がった。一拍遅れて、傍らの二人も立ち上がる。
 女の子はゆっくりと、しかし確実に、衣服を乱したオレに向かって近付いてくる。 始まってしまうのか。淫靡な宴が!
 戦きながらもオレは立ち尽くしたまま待っていた。季節は肌寒さを感じる頃だというのに、剥き出しの背中にはじわじわと汗が滲み始めている。
 未だ覆われたままの下腹部に至ってはもう凄まじい有様だ。 彼女はそんなオレの高揚とは裏腹に、涼やかな様相でローテーブルに屈み、タバコを灰皿へと押し付けた。
 そして身を起こす勢いのまま眼前に詰め寄ると、そのメンソールの匂いが残る指先でオレの顎をごく自然に捕まえた。
 至近距離、肉感的な唇が間近まで近付いて吐く息が細く絞られる。ああもういいもうどうにでもしてくれ! そう叫びかけたオレを、彼女の粘っこい甘言が遮った。
「それ、PK学園の制服だよね?」
 傍らに脱ぎ捨てた制服を指差し、彼女が呟く。オレは突然強いられたブレーキに脳内をきしませながらも反射的に頷いていた。
 すると彼女の緩く微笑んでいた唇が更につり上がり、にんまりと弧を描く。
 じゃあさ、と勿体ぶるように言い置いた彼女は、手中にしたオレの顎を撫で、綺麗に整えられた爪先を柔っこく立てて問いかけたのだ。
「窪谷須亜蓮、って知ってる?」
 は?
 漏れ出たオレの声と共に、カシャリと機械音が鳴る。咄嗟に音のした方向を見ると、彼女より僅かに後ろに立っていた黒髪少女が、オレにスマートフォンを向けていた。
 オレをねめつけて離さない黒光りするレンズに、それがカメラのシャッター音だったと早々に気付く。 何で、と最早分かりきったその意図に疑問をぶつけかけたオレを、彼女が窘めるよう
に、掴んだ顎ごと自分の方へと引き戻す。
「窪谷須亜蓮。ウチら前からあいつのこと気になってたんだよね」
 彼女の胸元から噎せ返るように立ち上る甘い芳香。吸い込んだそれはオレの首に絡みつき、うなじを撫でて背中に擦り寄ってくる。
 絶妙な媚びと傲慢。なんておあつらえ向きな女の子。やっぱりオレの目に狂いはなかった。彼女はヤれる女だ。
 しかしながらその引力に誘われるがまま乗りかかったことを、オレはこれほどまでに後悔したことはなかった。
「連れてきてくれたら――みんなでやってもいいよ?」
 だからこれは、約束のしるし。
 つくられた舌っ足らずの物言いで、彼女は受け取ったスマートフォンの画面をオレの目の前で揺らす。そこに映るのはもちろん、オレの中途半端な半裸写真。
 滲んだ汗はいつの間にか冷え、途端にぞくりと背中が粟立って、悪寒に耐えるべく舌を噛む。

  ――ハメようと思ったら、ハメられた。
 乾いたオレのか細い笑い声が、空しく部屋の中に響いた。

 <中略>

「さっ、斉木さん!?」
 
 思わず素っ頓狂な声を上げて飛び退くオレを、その人は煩わしそうに目を細めて見た。
  いつの間にか傍らにいた斉木さんは、手にした紙パックのカフェオレをじゅっと吸い込んでから、オレに向かってからかいを含めた視線を向けてきた。
「ち、違うっスよ何でオレが野郎なんかに……つーか斉木さん分かってるじゃないっスか」
 まるで恋する乙女のようだ。 言われてみればたしかにそんな素振りだったが、口にせずとも経緯を把握している斉木さんに揶揄されたのが居心地悪く、オレは焦って否定した。この人もなかなか意地が悪い。
 オレの指摘に、斉木さんは気怠く片眉を吊り上げただけだった。オレとはまた別の能力を持つその人には、程近い場所で考えていたオレの頭のことなど一切の誤解無く丸々伝わっている。 斉木さんは哀れみとそれ以上の呆れを漂わせながら、オレと窪谷須を交互に見た。
 そんなに必死になるほど必要なのか? セックスが? つまらなさそうな顔はまるでプレイボーイのそれだ。ちくしょう、知る気も無いくせに知ったような口を!
 ギリギリと歯を食いしばっていたオレはふと思い出した。そういえば斉木さんは燃堂、海藤らと同じように、窪谷須とも何だかんだ連れ立っている。
 二の足を踏んでいるオレに何かひとかけらでも取っ掛かりを。そこまで考えたところで、斉木さんはくるりと背を向け、教室に戻ろうとしてしまった。
「あっちょっ、ちょっと待ってくださいよ! オレはただアイツのこと、何でもいいから知りたくて――!」
 頑なな肩に縋りつきながら口にした言い分が、それこそ恋の始まりのようで思わず身震いす
る。しかしながら斉木さんのツボには入ったようで、彼はオレに向き直ると、悪い企みを思う時のような際どい笑みを浮かべてきた。
 お前の純粋な気持ちに打たれた。応援しよう。
 そんな風に洒落を匂わされているのが癪と言えば癪だったが、背に腹は代えられない。押し黙るオレに、斉木さんは一つ知らなかったことを教えてくれた。
 硬派な不良を貫いていた窪谷須は―― 一切女にかまけることなく、今日まで過ごしてきたらしい。 斉木さんはそれだけ教えると、途端に普段のクールな表情へ戻り、今度こそオレに構うことなく教室へと戻っていった。 オレは壁に背を預け、言われた言葉を反芻する。
 オレからすれば有り得ない事実だが、たしかに言われてみればそんなイメージもある。元は男子校だという話であるし、単純に機会に恵まれなかったことも察せられる。
 それでもやはり衝撃的だった。彼女の言い分や霊の証言を思えば、おそらく学外でもそれなりに需要はあっただろう。
 そんな中でも揺らぐことなく男の操を立て続けていたなんて、ヤツは鬼の皮を被った聖人君子か何かか。
 未だ談笑し続ける横顔に、オレはまた別の意味を込めた畏怖を向けてから視線を逸らした。
 しかし何だ、ということはもしかして童貞? 自分のことをちゃっかり棚に上げて、また一つ難易度が上がったと頭を掻きながら壁から身体を離す。
 立ち去る前に何となく斉木さんの姿を探すと、既に席に着いた彼はこちらを見ることなく、立てた人差し指だけを向けてきた。何だよ、結局現物報酬っスか!
 オレのツッコミを素知らぬ顔で受け流す涼しい横顔に、一つ嘆息して歩き始める。
 コーヒーゼリーか、それとも限定スイーツか。いずれにせよ何かしらの好物を対価に求める様は、達観した私利私欲もあるが、他意もある。
 一度貸し借りを清算したところで線を引いた。だからこれ以上の厄介ごとに巻き込まれにいく気はない。そう牽制しているのだろうが、それだけじゃない。
 思うにオレが必死で頼み込み、礼としてそれこそスイーツの一つや二つでも差し出せば、彼は折れて何とかしてくれるだろう。オレの欲望を叶える為でなく、握られている例の写真に関してなら。あの人にはそういう心がある。
 それは特殊な能力を持ち、生まれながらに逸脱せずにはいられなかったあの人の、紛れもない他人に対する優しさであり美点なのだが、本人にそういう意識はあまり無い。
 未だ素直になりきれないが故の認識だが、オレはそういう不器用な姿は割と好きだった。素直に微笑ましく思っていた。もちろん、こんなことを目の前で考えれば、あからさまに嫌そうな視線を向けられるだろうが。
 女にかまけず自己を貫いた男と、他人と距離を保つことで自我を形成する男。
 案外似た者同士気が合うのでは? いや、そこの仲を取り持ったところでオレには何も――
 そうやってとりとめもない思考を巡らせている内にチャイムが鳴り、オレは慌てて自分の教室へと駆け戻った。

 <以下抜粋>

「だから俺は……っ」
 硬派な男の感極まった告白には、胸を締め付けられるような熱い思いがある。無意識か意識しているのかは分からないが、その熱のこもりようは最早、既に相手がいる人間へ募らせている思いそのものと言えた。引き金がどこにあるにせよ、窪谷須が斉木さんを意識しているのは事実だろう。
 だからこそきっぱりと否定しておかなければならない。口ごもる窪谷須に向かって、オレは首を振って声を上げた。
「デキるとか無いんスよ、オレたち」
「いや、でも俺はお前らの……」
「違うんスよ! オレはただ、みんなでエロいことしたかっただけっス!!」
 待て、その言い方はまずい。
「いやあの、そりゃ欲を言えば一対一が良かったんスけど……!でもみんなでやれればなって、そうやってずっと考えてたんスよ!!」
 その言い方は余計にまずいだろう!
  斉木さんの冷静な指摘が脳内に入り込んでくる。しかし時は既に遅く、オレの口を止めることは出来なかった。
 焦げるような窪谷須の目が徐々に丸くなり、ぽかんとした表情に変わる。本当に心からオレたちが繋がっていると信じていたようだ。
 視界の端で斉木さんがまた小さく首を振っているが、オレはまず一つ誤解が解けそうだと安堵していた。
 窪谷須は呆気に取られた顔のまま、オレに向かって聞き返す。

 <以下抜粋>

 手のひらに出した粘液を伸ばして、絡めた指を尻に回す。ぬるぬると表面を滑る感触に斉木さんの腰が逃げを打つが、それを押し止めるように窪谷須が身体を抱いて唇の端にキスをする。もちろん手の中の性器を擦り上げることも忘れない。
  脚を大きく開き、更に腰を浮かせる体勢はかなり辛そうだった。しかし斉木さんの特別順応力の高い身体はオレの要求に応え、押し入ろうとする指を少しずつ飲み込みつつあった。 一度入り込んだ指はそれほど引っ掛かることなく侵入していく。途中でローションを継ぎ足しながらくぷくぷと穴を広げていく。
 半開きの口から覗く舌がエロいな、と思っていたら、案の定窪谷須が顔を引き寄せて吸い付いていた。舐めしゃぶられる舌と扱かれる性器、人工の粘液をぶちまけられて含ませられる穴、それぞれから粘着質な音を立てる斉木さんに、オレは熱っぽく語りかける。
「……あー良さそ、斉木さん気持ち良いっスね。上も下も中も全部ぐちゃぐちゃ」
「こんな感じになるんだな……」
「イイっスね、最高。すげーいれたい」
 窪谷須と目が合う。何か言われるかと思ったが結局窪谷須は黙ったままだった。
 オレは斉木さんの顔を覗き込むと、窪谷須に散々吸われて熱を持ちつつある唇に一度だけ口づけてから囁いた。
「いれたいっス、斉木さん……もっとエロいことしましょうよ。興味あるんスよね?」
 入れた指をぐるりと中で動かしながら懇願する。斉木さんの吐き出す息は震えている。開いた唇が僅かに動き、オレはそれを了承の意だと受け取った。
 作務衣を乱し、前を寛げる。改めて刺激を与える必要がないほど屹立した性器に、言い訳は通用しない。 ゴムを被せた性器を、ローションで滑った穴に押し付ける。
 窪谷須は斉木さんの頬に顔を寄せ、労るように性器を扱いていた。
 広げた穴がオレの性器を飲み込んでいく。限界まで広がった縁が心地好く締め付けてきて思わず短い声が出た。四方を温かな体温で包み込まれて絞られる。
 頭を強く殴られたような衝撃と共に、鼓膜の奥でその感覚が反響して目に映る全ての輪郭がぼやけていく。
 入れただけでこうまで追い立てられて、動き出したらどうなるのか。快感が爪先まで急速に駆け巡り、高い熱にふらつく頭を揺らしながら耐えきれずに呻く。