龍が如く再録集 結
書き下ろし 秋山×桐生 R-18「Pray」 本文サンプル
信じられない。
今の気持ちを正確に表現するとしたらやはり、その一言に尽きると言えた。
降り注ぐ熱い雨が、身体を隅々まで温めていく。
湯気で霞む視界の中で秋山はもう一度心の中で呟いた。――信じられない。
手のひらに受けた湯で顔を洗い、身を屈めてコックを捻る。シャワーが止まり、髪や顔から伝う滴を拭って息を吐く。
バスルームはセパレート式でこそあれ、それほど広くはない。そのスペースに相応して部屋自体も、一般的なビジネスホテルより少しゆったりしている程度のそれだった。
通常ならもっと寛げる部屋を用意したし、アルコールだなんだと気を回して万全の準備をしただろう。
ただ今夜に関して言えば全てにおいて 余裕がなく、急いていた。過ぎる夜の時間が一秒でも惜しくて、とにかく二人きりになれる空間がすぐにでも欲しかった。
――彼と。
濡れた身体を拭き、備え付けの室内着を羽織って部屋に戻れば、窓際に設えられたベッドに腰掛けるその人と目が合う。
つい口をついて出そうになるその、繰り返し過ぎて擦り切れた言葉を飲み込んで、秋山は彼に近付いた。
「……桐生さん」
絞り出した名前に背中が震える。見つめてくるその一見厳つい瞳も、濡れて乱れている髪も、物言いたげに動く唇も何もかもが眩しく思えた。
<以下抜粋>
ふと視線を感じて顔を上げると、荒い息を吐き出している桐生がじっと秋山を見つめていた。
「どうか、しましたか」
「いや……こんなにいい男だったかと思ってな」
「……あなたの褒め言葉は俺、全部真に受けますからね」
ストレートな睦言に照れを押し殺してそう返せば、構わないと頷かれて今度こそ何も言えなくなる。全身を駆け巡る熱が更に上がったような錯覚を覚えながら、秋山は深く息を吐き、根元まで押し入った。
「っ、う……っ」
含ませた粘液が泡立つ音に合わせて、桐生が喘ぐ。
ゆっくりと馴染ませるような動きを繰り返して、一拍置いてから浅い所を何度も突き上げた。
「あ……っう、あ、あ……っ、あ、あ……っ」
強く感じる所を硬い亀頭で何度も押し上げられて、桐生の口からは低く、それでいて甘い喘ぎが絶えず漏れていた。
一度覚えた快感は時間を置いても忘れないのか、桐生はとてつもなく感じ入った様子で緩やかな動きの合間に訴えてくる。
「もう……っ若くねえんだ、少しは加減しろ……!」
「は……大丈夫ですよ、同じこと、数年前もおっしゃってましたから……っほら」
薄く開いた唇を舐めながら、秋山は桐生の性器を掴んだ。